にっぽん集落町並み縦走紀行 
  
第7日 日田(佐賀県)~下関(山口県)
    日田豆田町 日田隈町
  杖立温泉  黒川温泉  阿蘇一宮 戸吹
 


日田隈町 三隈川沿いの町並み
 
 ホテルの朝食前に日田豆田町を歩こう。この町は3度目であるが、さすがに同じ町に泊まっていてスルーはできないほど重要な町並みだ。早朝なので観光客はいないが、どうもこの町並みには感心しない。かなり前に国の重伝建に指定さていること、九州の真ん中に位置していること、高速道路が通っていて便利であることから県内外の観光客が多い。まぁ。結構なことであるが、客寄せののぼりやらサインやら、歴史的町並みを味わいに来た者にとって邪魔なものばかりがついている。


日田豆田町 花月川の対岸から豆田町地区を見る

 それに引き替え、もう一つの町並み、日田隈町は自然体で好感が持てる。実はこの隈町、初めて訪れるのである。川の近くにあると聞いていて、過去ずっと豆田町の北側にある花月川のあたりを捜索して無いと思っていた。ところが、南の三隈川のほとりだった。まったくお恥ずかしい話であるが、35年以上やっている集落町並みWalkerでもこういうポカはたくさんある。


日田隈町 いままで見つけられなかったリベンジの町並み

 これから、熊本県に入って阿蘇外輪山系、カルデラ系の町並みを経由した後、大分県に入り大分市郊外にある戸吹という町を訪れ、大分駅からは鉄道にて小倉へ移動。そこで九州を終えることになる。ところで、この戸吹という集落だが、東九州に未探訪地としてポツリと残っていて、今回の旅の計画を悩ませてくれた。この町さえなければ早々と東へ移動し、四国へ入ることもできたのに。まぁ、戸吹のおかげで日田に泊まることになり、隈町を歩くことができたのだから良しとするか。


日田豆田町 提灯やサイン類を減らしてほしい

日田豆田町 何年前か覚えていない頃

日田隈町

日田隈町
  国道212号線は大山川に沿って山間に入っていく。国道は広くもないが、進行方向にも対向車にも、トラックが多い。高速道路を日田で降り、阿蘇方面へ抜ける最短ルートだからであろうか。

 杖立温泉は、旅好き少年のころから時刻表に載っていたので、名前は良く覚えている。どんなに有名なのかと寄ってみたら、昭和時代の旅館建築が谷の斜面にぎっしり建てられた温泉街だった。湯温が高温であるため、蒸気が街のあちらこちらで上っており温泉地らしい。そして、路地は建物の間あるいは下を縫うように通っていて面白い。思わぬ高得点だ。


杖立温泉 湯温が高いためあちらこちらで蒸気が上る温泉地らしい温泉


杖立温泉 川を挟んで斜面に所狭しと温泉街が形成されている

 一方、黒川温泉は平成の温泉街といった印象。かつては山間の湯治場というイメージだった黒川温泉だが、温泉組合が力を合わせて綺麗に整備し、九重高原という好立地にテレビの旅番組ブームに乗っかて、みるみるうちに九州の人気温泉地のトップに躍り出てしまった。古い町並みを紹介する文献に紹介されてはいるものの、どうせ古い町並みとして取り上げられるべき町並みではないだろうと予想していが、やっぱりそうだった。第二の湯布院というか、びっくりするような数の観光客が訪れていた。こうなると、私としては引いてしまって、取材は15分で済ますこととなった。
 

杖立温泉 路地が素晴らしくいい

黒川温泉 旅番組ブームにのって人気が出た平成の町並み

やまなみハイウエイ 城山展望所から世界一の阿蘇カルデラを見下ろす

 やまなみハイウエイを経由して阿蘇へ向かう。やまなみハイウエイといえば、私が免許を取って初めて旅先で走った道。懐かしい。外輪山の縁の展望台で阿蘇カルデラを俯瞰した後、阿蘇神社の門前町阿蘇一宮へ下った。一般的に門前町というのは神社や寺院の参道を主軸に形成される。最初、JR豊肥本線宮地駅から神社へ向かう通り(阿蘇山方向)が門前町であろうとクルマで流してみたが、目立った町並みは無い。やり過ごそうかと思ったけど、万が一反対側にあったら後悔すると思って反対側に行ってみたらあった。うっかりまたポカやるとこだった。
 鳥居近くに旅館があり、参道には土産物屋や飲食店が並んでいる。一方、商店街は参道の終点から東の方へ、参道を囲むように展開している。また、カルデラ内の火山群の北東に裾野にあたるここ宮地地区と役犬原地区にかけての一帯では、いたるところに地下水が地表より高くまで湧きあがる湧水(自噴水)がある。これはカルデラ内の火山群に降った雨水が地下深く浸透し、圧力の高い地下水となるためである。自噴水の高さは2mほどにも及び、古くから生活用水や農業用水に利用されている。門前町商店街では、湧水を「水基」とよんでまちづくりに活用していた。

 
国道57号線を東へひたすら走る。途中には荒城の月で有名な竹田城址がある。犬飼から国道10号線に入り16:30に大分市戸吹に着いた。近くに重伝建臼杵がある。2時間たらたら走って眠かった。
 戸吹本町は、田園地帯に突如現れる豪商の町というのが第一印象。周囲とは違和感があるほど、豪壮な古い民家の町並みが残っている。それは、帆足本家とその縁戚を中心とする豪商の町。帆足本家はかつては造り酒屋を営んでいたが、現在では酒造業を廃業しており、蔵などを修復して公開施設として整備が進められている。


戸吹 帆足本家を中心とした豪商一族の商家町

 大分駅に17:30着。3日間行動を共にしたレンタカーを返した。福岡県内まで走って小倉あたりで返した方が乗り捨て料金も取られずリーズナブルではあるが、ここでも体力温存作戦である。小倉駅に20:30、関門トンネルをくぐり、山口県下関が今日の終着点である。駅前のビジネスホテルに荷物を置いて休んだ後、夜の町へ食事に出かけた。
 

下関の歓楽街 豊前田 聞いていたほどにぎやかではない
 
下関といえばフク(下関ではふぐとはいわずフクという)。フグの食べられる居酒屋で九州制覇の祝杯を獺祭で挙げた。
そのあと、旧赤線だった下関新地を再訪した。遊里探訪については、当サイトのメインテーマの一つであるが、下関新地は全国の中でも印象深い町並みの一つであると思う。下関駅近くの市場は深夜ということもあり結構強烈な印象だった。


下関の居酒屋で九州制覇を山口の酒獺祭で祝う


阿蘇一宮 鳥居の前に旅館が残っていた

阿蘇一宮 門前参道には土産物屋・飲食店でにぎわっていた

【回想】 竹田の武家屋敷町

戸吹 田園地帯に突如豪商町が現れる

【回想】 大分の南部にある臼杵の町並み

下関駅近くの市場 深夜だったので強烈な印象だった
 
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