2012年1月21日に日本最南端の集落である波照間をスタートした「にっぽん集落町並み縦走紀行」も33日目で北海道函館を終えた。それから1ヶ月半を空けた11月23日、再び函館駅の前に立っている。10月初旬の函館ではカーディガンを羽織っていたが、今日はしっかりと防寒着姿。これから3日間で北海道の函館から稚内までの約600kmを移動しながら町を訪ね、わが国最北の集落宗谷岬で36日間にわたる縦走紀行が終わる。
ここで改めてこの旅の目的を話しておきたい。直向きに続けてきた集落町並み探訪は35年を経過し、2003年に始めた当サイトも来年でちょうど10年、探訪した集落町並みも2000ヶ所を超え、おまけに50歳を目前にしている。そこで、この辺で一区切りつけたいという心境になった。そのために何か記念的な旅がしたい。全国には行かねばならぬ大物が各所に散らばっている。これら重要な未踏地を最南端から最北端まで一続きに歩く旅を一年間という限られた時間の中でやり遂げられないか。毎月1回の週末や連休に出かけるのを基本とし、前回終わった町からはじめ次の旅を開始する町で終わるというかたちで続けて行く。2012年の正月に試しに概略を計画してみたら、なんとかできそうである。そうなると気持ちの高ぶりを抑えられなくなりこの無鉄砲な旅を始めてしまった。第33日まで、危うい場面はあったっものの計画を狂わせるような大きなトラブルはなく、順調に進んできたといえよう。この旅もあと3日で終わってしまうと思うと、達成に向けてはやる気持ちと淋しい気持ちとが入り混じる。泣いても笑ってもあと3日。きちんと旅をやり切りたい。
波照間島 日本最南端の碑
函館7:04発、スーパー北斗1号は気動車独特のディーゼルエンジンの唸り音を響かせて、函館駅をゆっくりと発車した。やがて大沼公園、車窓の風景は雪と紅葉。北海道では秋と冬が一緒に来ると言われるが、こういうことなんだと納得する。8:15長万部駅に到着した。長万部は、約30年前に初めて北海道に足を踏み入れた晩に泊まった街である。宿は線路沿いであったのは覚えているが、場所は定かではない。そのころの私は、旅行ガイドブックで紹介されている程度の町並みを観光名所として歩くような旅しかしていなかったので、長万部はまち歩きの対象ではなかった。長万部駅は函館本線から室蘭本線が分岐する鉄道では重要な駅。しかし、ほとんどの特急列車は室蘭本線経由で札幌にいくから、函館本線の長万部以北はローカル線のようになっている。30年前、駅を朝一番で出る函館本線下り鈍行列車は客車の列車であり、それに乗りたいがために長万部に泊まったのである。懐かしい思い出がこみあげてくる。
長万部駅を出ると南北に大通りが通っていて、そこに面して2〜3階建ての木造看板建築の商店が並ぶ。この空が広くてあっけらかんとした町並みが北海道ならではのもの。これを見ると北海道に来ているんだという実感が得られる。駅裏に天然ガス採掘で温泉が発見されたことから形成されたという温泉街があり歩いてみたが、いわゆる情緒ある温泉街ではない。しかも今ではすっかり寂れている。長い跨線橋で線路を渡る。さほど過密でもないダイヤの室蘭本線と一両編成の鈍行列車しか行き来しない函館本線。しかし、線路はたくさん敷き詰められていて、過去の栄華を物語っている。
|