にっぽん集落町並み縦走紀行 
  
第28日 郡山(福島県)~南会津~郡山(福島県)
     牧之内  岩瀬湯本  倉村  田島   

倉村(福島県)

 縦走紀行の計画で最も苦労したのが今回ではないだろうか。日本海の孤島はもとより、今日廻る南会津がことのほか厄介であった。つまり高速道路により移動の時間短縮が図れず、アクセスが一本で往復するだけで一日かかってしまう。東北地方でも東京からもっとも近いし、今までもかなり足を運んでいるエリアであり、見落とし箇所を消化するような内容なのでモチベーションも低い。過去にやり過ごしてきたことが悔やまれる。
 郡山駅でクルマを借り、ひたすら西へと一般道を走る。まずは福島県天栄村の白河街道江花集落。「図説日本の町並み」に土蔵群の町並みとして紹介されていたのであるが、綺麗な田園風景だけれど特筆すべきものではない。続いてすぐ近くの牧之内へ。ここは旧白河街道の宿場町だった集落で、文献では店蔵が並ぶとある。確かに1階は開口部が大きく2階は閉鎖的な店蔵・座敷蔵がわずかに残っていた。まぁ☆1つといったところか。
江花の農村風景

旧牧之内宿の座敷蔵

 羽鳥湖を越えて中通り地方から会津地方に入る。すると、国道から旧道が分かれアイストップに大きな茅葺屋根が重なっているのが見えた。岩瀬湯本温泉の集落である。ここには茅葺の温泉旅館が2軒あり、集落内にはほかにも茅葺屋根が多い。特に保存処置が施されている村ではないのに中々なものである。続いて、湯本に近い下郷町芦ノ原という集落は街道に面して妻入の寄棟平屋建てを並べる街村で、思わずクルマを停めて取材してしまった。にわかに探訪家としてのモチベーションが高まる。
 

下郷町芦ノ原の町並み
 
 
 

江花集落の町並み(福島県)

旧牧之内宿の町並み(福島県)

岩瀬湯本の町並み(福島県)

岩瀬湯本の町並み(福島県)
 下郷町湯野上で国道121号線に出てここから南下する。この辺りの国道121号線は大川の切り立った溪谷沿いを通っていて、旧会津西街道は西の山の上を通っている。つまり、大川沿いの新道ができて旧道が寂れ、国重伝建で有名な大内宿の歴史的町並みが維持された。下郷町楢原で旧道と新道は合流し、国道121号線は会津西街道と重なる。楢原から軽快に国道を流して走っていると沿道の町並みに目を奪われた。蔵、蔵、蔵、また蔵、、、おい!これは珍しいではないか。やり過ごすわけにはいかない。この町、いままで10回以上は通っているというのに気付かなかった。見事な座敷蔵の町並みで、その名も倉村。凄い!喜多方の杉山塔寺と互角である。会津地方には蔵を街道に面して競うように並べる町が多いが、このように残っている場所は今や貴重である。久々に大当たり、発見の集落だ。
倉村の町並み

 こうなるとモチベーションは最高潮に達する。移動に時間を要するというのに、心に少しでも響く町並みをやり過ごすことができない。続く会津田島は南会津の中心町であり、十数回通り過ぎてはやり過ごし続けてきた町。だが今日は違う。クルマを停めて歩いてみれば、やはり蔵造りを主体とした特徴あるものだ。凝灰岩ですべての外壁を仕上げた建物もある。

田島の町並み

田島の町並み
 

倉村の町並み(福島県)

倉村の町並み(福島県)

【回想】杉山の町並み(福島県)

【回想】塔寺の町並み(福島県)
 こうなると勢いはおさまらない。会津地方最奥の桧枝岐村までも平らげてしまいたくなった。沼田街道は交通量が少なく、したがって快調に走り時間を短縮することができる。ところが桧枝岐村は多雪地域ならではの片流れトタン屋根(最近のもの)ばかりで、伝統的な民家は見つけられなかった。人家のなくなる最奥地まで行ってすぐUターン。ぐぐっと戻って旧伊南村の青柳集落を取材する。ここも「図説日本の町並み」で紹介されていた村。数は減らしているであろうけれど、切妻のマヤを持つ中門造りが数棟残っている。青柳から北へ数キロ、伊南川を東へ渡ると旧南郷村の集落。ここは、民家形態も集落形態も一見の価値のあるまとまったものだ。三日間歩き続けたため疲労はピークに達していたものの、それも忘れ興奮して歩いた。寄棟・入母屋の突き上げ屋根のマヤを持つ中門造りは迫力がある。
桧枝岐村の最奥部

 界から2時間かけて同じ道を郡山まで戻る。南会津地方は、やはり集落の宝庫だといえよう。喜多方三津谷杉山会津若松塔寺大内水引前沢などが有名であるが、他もレベルは高い。茅葺屋根、中門造り、蔵造りなどなど、個々の民家の形態も特徴があり、集落町並みとしてまとまっている。
旧南郷村界集落

 郡山駅に18:30頃到着した。三連休のため帰りの新幹線を早めることはできなかったから、駅前の飲み屋街でカウンターのある居酒屋の暖簾をくぐった。カウンター式の地元の人が来るような居酒屋では、必ずと言っていいほどカウンターに一人で飲んでいる親父がいて店の人と絶え間のない会話をしている。そういう時、話題に割って入って一緒に飲むか、一人の世界で飲むか迷うが、今日は疲れていてとても割って入る気力はない。地酒を二合ばかり飲んでさっさと店を出た。何となく中途半端なので向かいのラーメン屋で、よせばいいのにラーメンと酎ハイを頼んだ。不味かった。

 
郡山駅
 

青柳集落の町並み(福島県)

界集落の町並み(福島県)

【回想】三津谷集落の町並み(福島県)

【回想】前沢集落の町並み(福島県)
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