荒砥(山形県)
|
昨夜早く寝たら今朝早く目が覚めてしまった。歳ともに起床時間が確実に早まっている。いったん起きたらもう眠れないので、まだ薄暗いけど上山の町を歩こう。宿泊したホテルはこの温泉地で最も大きい月岡ホテル、古くからの温泉地である湯町からはやや離れている。
上山の武家屋敷町(山形県)
ホテルと湯町の間には石塀を連ねた住宅街となっている。城下町時代の武家屋敷町で、門塀のみならず古い茅葺の住宅もみられる。湯町は建物が建て混んだいかにも温泉地という町。朝日が差し込み始めてさわやかである。特に木造の旅館建築が向かい合う一角は見どころだ。そこを抜けてもボチボチと温泉旅館は続いている。上山は、城下町・宿場町に温泉町がオーバーラップしたような町である。そして、奥州街道沿いは商店街となり、白壁の蔵造りや茅葺屋根の町家、裏町には飲み屋街や歓楽街が見られる。実に見どころの多い町並みだ。
奥州街道の町並み(山形県)
|
上山 湯町で最も見どころの一角(山形県) |
上山 複雑な建物だ(山形県) |
上山 奥州街道の町並み(山形県) |
赤湯駅でクルマを返却し、山形鉄道に乗る。第三セクターの万年赤字線だった山形鉄道は、数年前に社長の一般人公募をした。そこで、選ばれたのが当時旅行代理店に勤めていた鉄キチのサラリーマン。彼の斬新なアイデアで乗客は増え、彼は一躍有名人になった。今回、なぜその鉄道に乗りにきたかというと、実は彼は私の従弟であり、一度彼の手塩にかけた鉄道に乗りたいと思っていたからである。互いに旅好きだった二人の子供の内、私は町を、彼は鉄道を追っかけていった。
山形鉄道赤湯駅にて
8:53赤湯発荒砥行きのディーゼルカーは、フラワー長井線という名の通りカラフルに塗装が施された可愛い一両編成。休日の地方ローカル線とは思えないほど客が乗っている。山形盆地南部の広々とした田園地帯を走り、9:30に中心駅長井に着いた。山形鉄道の本社は長井駅駅舎横の住宅のような2階建ての建物。1階では山形鉄道グッズも売られていて、観光客らが立ち寄っている。フムフム、大したものである。
長井は米沢の北西、最上川の舟運で栄えた町。北前船の寄港地酒田に入ってきた物資や上方文化は、最上川を遡って長井で荷揚げされた。旧船着場から町へ向う道筋にある十日町には珍しい茅葺屋根の町家が固まって残っている。十日町から南北の目抜き通りを南下していくと最初が大町で大きな屋敷(質屋)が残っている。そこから南はしばらく道が拡幅されていて古い町並みは残っていないが、本町2丁目辺りには近代洋風建築が、あら町には古い町家が飛び石状に残っている。最上川舟運で栄えた長井の町は、近代の色濃いクラッシックとモダンをあわせもつ町である。
町を南から北へ向かってじっくり歩く。町並みは十数年前に訪れた時とほとんど変わっていないのには驚かされる。そして最後に300年続いた呉服商「丸大扇屋」の建物に入り、管理されている女性から建物のこと町のことを詳しく伺った。長井は改めて素晴らしい町並みだと思う。山形鉄道の企画でももうちょっと沿線の町歩きを企画に盛り込んでいいのではないか。資料館の女性も同様のことをおっしゃっていた。今度、従弟にあった時には提言しよう。
11:13長井発、11:33終着駅の荒砥着。駅前には何にもない。ここで二時間半過ごさなければならない。レンタサイクルがあったので借りた。まずは腹ごしらえしようと街道沿いの蕎麦屋に入る。たまらず我慢できず秋味を一本、喉を潤した。
荒砥 蕎麦屋のランチで
さて、荒砥の町を巡る。と言っても今まで荒砥では街道沿いに立つ四窓の大きな土蔵のある民家しか知らない。いわゆる古い町並みの場所が絞れない。四窓の蔵のある交差点から最上川の方向へ伸びる道を行くと商店街らしき匂いがしてくる。そして、T字に突き当たったらその交差する側の通りに立派な民家が並んでいるではないか。これは、まったく予想だにしなかった。長い町歩き経験を持っていてもすんなり解けない場合があるものだ。最上川水運の河港との関係があるのであろうか。
荒砥の町を歩いた後、まだ時間がある。5km離れた最上川の河川敷で鮎祭りが催されているというので行ってみた。鮎の塩焼きでも食べたかったが長蛇の列で断念。すぐさま駅に引き返す。
荒砥 最上川
|
山形鉄道 長井駅(山形県) |
長井 洋風の不思議な建築 小池医院(山形県) |
長井 茅葺屋根の町家が数軒残る(山形県) |
荒砥 街道沿いの四つ窓蔵(山形県) |
荒砥 河岸段丘のエッジの古い町並み(山形県) |
山形鉄道荒砥発14:33→赤湯着15:24、山形新幹線赤湯発15:31→福島着16:19。日が暮れるまでまだ1時間半ある。よし、飯坂温泉に行こう。福島交通飯坂温泉駅を出ると間の前に摺上川が流れアーチ式の十綱橋が架かっていた。摺上川の両岸には大型の旅館が建ち並んでいるが、橋を渡らず左岸の町を歩く。商店街を抜けると白壁の三階建てのなかむらや旅館が見えてきた。そして、真新しい総ヒバ造りの鯖湖湯があり、温泉街のシンボルとなっていた。芭蕉も奥の細道の途中に浸かったという鯖湖湯。界隈は歴史ある温泉町の面影を残している。今朝訪れた上山温泉も同様だが、ここ飯坂温泉も町並みとして取り上げられることは少ないけれど質は高い。温泉街を網羅的に追っかけていく必要があるなと感じた。
飯坂温泉 鯖湖湯
福島は餃子が有名なようで、飯坂温泉にも餃子を出す飲み屋が数軒あった。今晩はここで夕食としよう。餃子をおかずに一人結構飲んだくれた。福島交通→東北本線と乗り継いで郡山駅に22:00頃着。ビジネスホテルの客室に転がり込んで縦走紀行第27日を終える。
|
飯坂温泉 なかむらや旅館(福島県) |
飯坂温泉の町並み |
|