にっぽん集落町並み縦走紀行 
  
第24日 品川(東京都)~伊香保(群馬県)
     野田  榛名  伊香保

伊香保(群馬県)
 
 東京から北をどう攻めるか悩んでいた。特に日本列島の中でも厚みのある部分。新潟県中越2ケ所、下越1ケ所、福島県中通り2ケ所、南会津2ケ所、さらに山形県日本海側2ケ所(内1ケ所は離島)、内陸に1ケ所という具合に広範囲に万遍なく散らばっている。太平洋岸と日本海岸の移動も山越えになるのでロスが大きい。さらにその後の宮城県へとうまくつなげなければならない。十数パターンは行程案を引いただろう。一応、福島県新潟県山形県という計画に落ち着いたものの余裕がなく慌ただしい行程で納得には至っていなかった。そんな時、夏休みということで娘に家族旅行にいくかと持ちかけたらOKだという。であれば、縦走紀行にうまく組み込んでこの難所エリアのいくらかでも潰しておきたい。取り合えず近場で群馬県伊香保温泉の宿を押さえた。縦走紀行では東京以外の関東地方は考えていなかったけれど、伊香保を入れて新潟につなげば連続感が出て良いではないか。難物の福島県南会津を次回じっくり潰すこともできる。

首都高から出発

 お盆休みの渋滞を考慮して早朝に東京品川を発った。だが、関越道はさほど混んでおらず伊香保に近い駒寄出口に7時台で着いてしまった。伊香保は榛名山の裾野にある高原の町。そこへ向かう県道を走っていたら宿場町の屋号が表示された町並みが現れた。旧野田宿と表示に書いてある。伊香保街道は、地方と地方を結ぶ街道でなはく、佐渡街道あるいは三国街道から分岐して伊香保温泉との間を結ぶ短いもの。伊香保が古い温泉場で人を集めていた証であろう。野田はのどかな田園の中を榛名山へ向かって上がって行く町並みで、中程に立派な長屋門と蔵を構える本陣家が残っていた。その他の建物は上州らしく養蚕農家が多い。

伊香保街道 旧野田宿(群馬県)

 早朝だというのに気温は相当上がってきている。また心配は万訪号のエンジンの水温上昇だ。ゆく道は榛名山の裾野をだから登り一辺倒となる。「お前もうわかっているだろう」と言わんばかりに水温系は上昇し、いとも簡単に100℃に達した。万訪号の前面グリルにはカッコつけのエアロパーツをつけているが、多少なりとも冷却の妨げになっていると思われるので、コンビニの駐車場で思い切ってひっぺがす。そして、エアコンを止めヒーターを最強にしてみた。これはハコのレーシングカーが夏のレースでよく使うテクニック。クルマのヒーターはラジエターの熱を利用しているから、ヒーターを利用することがラジエターの放熱になるのだ。水温計はみるみる下降し登坂が続いているというのに90℃になった。やった!ついに熱対策の方法を見つけたぞ。車内は蒸し風呂、窓全開にすると猛暑日の外気が涼しく感じるから不思議だ。道路のアップダウンに合わせてヒーターとクーラーを忙しく切り替えながら走る。一体なにをやっているのかわからないが、これで心配なく峠が越せるようになったのだからめまぐるしい進歩である。伊香保温泉を通り過ぎ、いい気になって榛名山を登り切り、榛名湖の風景に浸り、遠慮なくまた山を下る。
 


榛名山の裾野 田園の中の野田集落(群馬県)

野田(群馬県)

野田 旧本陣家(群馬県)

エアロが引っぺがされた万訪号 水沢にて

榛名湖(群馬県)

 榛名神社は榛名山の中腹にある。江戸時代から「榛名講」という信仰者を迎え入れた宿坊が並ぶ社家町がある。まず榛名神社に参った。岩場に築かれていて見ごたえのあるものだった。本殿の奥に大きな岩があり、その上にゴロンと岩が乗っている。その姿は明治期の絵図に誇張して描かれていた。門前の宿坊も一緒に描かれていて、元来の町の範囲が把握できる。宿坊は数棟古そうな建物があったけれど新しいのが多い。景観だけで判断すれば取り上げるかどうか迷うレベルではあるが、こういう宿坊街というのは珍しいので掲載することにする。

榛名神社の図(明治期)
 
 


榛名神社(群馬県)

榛名神社の宿坊街(群馬県)

榛名神社の宿坊街(群馬県)

 山を下りピックアップしていた平野部の集落を幾つか探ったがみるべきものはなく、朝走った伊香保街道まで戻る。水沢は「水沢うどん」で有名な集落。でも近代的なうどん屋が並んでいるだけなので、うどんを食べるがリストからは外す。再び伊香保へ登ってもまだ1300。グリーン牧場でパターゴルフでもしようかと思ったが、暑すぎて無理だ。この暑さでは何もする気が起きないから早く宿に行って温泉に入ることにした。宿は松本楼という大型旅館が経営する洋風の小さなホテル。まだ時間が早いので他の客はなく、風呂を独り占めできた。すると外では激しい夕立になり雷がなりだした。部屋に戻ると厚い雲で窓の外は真っ暗。稲妻と音の間隔が短いので雷はすぐ上でなっている。ビカッ窓の外が真っ白になったかと思うと同時にドーン。雷が松本楼本館の避雷針に落ちた。



 雷雲が遠ざかるのを待って、伊香保温泉の階段街まで歩いてみた。階段の両側には旅館や土産物屋などが並んでいる。雨が降っているから歩いている浴衣姿の温泉客もまばら。そうだ、自分が娘ぐらいの年の時に家族旅行に来たことがある。閑散とした遊技場の灯りが懐かしかった。


榛名山登山道から伊香保を見下ろす

伊香保温泉(群馬県)

伊香保温泉の遊技場(群馬県)
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