東京から北をどう攻めるか悩んでいた。特に日本列島の中でも厚みのある部分。新潟県中越2ケ所、下越1ケ所、福島県中通り2ケ所、南会津2ケ所、さらに山形県日本海側2ケ所(内1ケ所は離島)、内陸に1ケ所という具合に広範囲に万遍なく散らばっている。太平洋岸と日本海岸の移動も山越えになるのでロスが大きい。さらにその後の宮城県へとうまくつなげなければならない。十数パターンは行程案を引いただろう。一応、福島県→新潟県→山形県という計画に落ち着いたものの余裕がなく慌ただしい行程で納得には至っていなかった。そんな時、夏休みということで娘に家族旅行にいくかと持ちかけたらOKだという。であれば、縦走紀行にうまく組み込んでこの難所エリアのいくらかでも潰しておきたい。取り合えず近場で群馬県伊香保温泉の宿を押さえた。縦走紀行では東京以外の関東地方は考えていなかったけれど、伊香保を入れて新潟につなげば連続感が出て良いではないか。難物の福島県南会津を次回じっくり潰すこともできる。
首都高から出発
お盆休みの渋滞を考慮して早朝に東京品川を発った。だが、関越道はさほど混んでおらず伊香保に近い駒寄出口に7時台で着いてしまった。伊香保は榛名山の裾野にある高原の町。そこへ向かう県道を走っていたら宿場町の屋号が表示された町並みが現れた。旧野田宿と表示に書いてある。伊香保街道は、地方と地方を結ぶ街道でなはく、佐渡街道あるいは三国街道から分岐して伊香保温泉との間を結ぶ短いもの。伊香保が古い温泉場で人を集めていた証であろう。野田はのどかな田園の中を榛名山へ向かって上がって行く町並みで、中程に立派な長屋門と蔵を構える本陣家が残っていた。その他の建物は上州らしく養蚕農家が多い。
伊香保街道 旧野田宿(群馬県)
早朝だというのに気温は相当上がってきている。また心配は万訪号のエンジンの水温上昇だ。ゆく道は榛名山の裾野をだから登り一辺倒となる。「お前もうわかっているだろう」と言わんばかりに水温系は上昇し、いとも簡単に100℃に達した。万訪号の前面グリルにはカッコつけのエアロパーツをつけているが、多少なりとも冷却の妨げになっていると思われるので、コンビニの駐車場で思い切ってひっぺがす。そして、エアコンを止めヒーターを最強にしてみた。これはハコのレーシングカーが夏のレースでよく使うテクニック。クルマのヒーターはラジエターの熱を利用しているから、ヒーターを利用することがラジエターの放熱になるのだ。水温計はみるみる下降し登坂が続いているというのに90℃になった。やった!ついに熱対策の方法を見つけたぞ。車内は蒸し風呂、窓全開にすると猛暑日の外気が涼しく感じるから不思議だ。道路のアップダウンに合わせてヒーターとクーラーを忙しく切り替えながら走る。一体なにをやっているのかわからないが、これで心配なく峠が越せるようになったのだからめまぐるしい進歩である。伊香保温泉を通り過ぎ、いい気になって榛名山を登り切り、榛名湖の風景に浸り、遠慮なくまた山を下る。
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