名古屋T
 

名古屋市内と周辺部の集落町並みは、何回かに分けて順次訪れる予定である。今回は名古屋西部の低湿地帯に形成された町並みを中心に歩く。
蟹江(愛知県蟹江町)
「カニエ」とは印象深い響きの地名である。クリーク地形の街と聞くとなおさらで、町中を蟹が歩いていそうな気がしてくる。名古屋からJR関西本線で10分と超近い。駅前には何もなく、旧市街は駅から結構離れている。終戦直後の航空写真と現在の航空写真を駆使して町並みを探す。予想通り、中心の川に近いところに古い民家が集中して残っていた。そして水郷と呼ばれる蟹江川の景観がまたシブイ。「水の景」という観点でなかなか良い雰囲気を持っている町並みである。
富田(愛知県名古屋市)
富田は町並みとして特に紹介されているような町ではない。蟹江の航空写真を探していて隣に同じような地形の町があったので訪れてみた。このあたりの低湿地帯の町は川に沿って集落が形成されたようで、水運を背景に産業が発達していた。富田は蟹江のような都市的な佇まいというよりは農村という感じだが、中心部に酒造会社があり、事務所やお屋敷、大きな蔵が町の中に散在している。ここもやはり「水の景」とうう点で面白みのランクがひとつ上がるわけで、リストに加えることとした。
白壁(愛知県名古屋市)
白壁地区は蟹江や富田とは全く関係ない地域だが、今回歩いておくことにした。終戦直後の航空写真にしたがって焼けていない場所を辿りながら白壁地区へと近づいていく。戦後の開発で変わってはいるものの古い町家はわずかながら残っている。
白壁地区に入ったとたんに町の雰囲気は変わる。突然現れた高級住宅街といった感じ。敷地の細分化が思っていたより進んでいないので、長く続く塀と屋敷内の緑が武家屋敷町を原形にもつ高級住宅街の雰囲気を守っている。また、戦前住宅が予想以上に残っており、戦後の町のイメージの強い名古屋にあって貴重なエリアである。