笠間・稲田(2004.10.12)
 

東京市電は明治中期ごろから敷設され始めた。市電軌道の路面には石が敷き詰められたが、その石は茨城県の稲田石(茨城県笠間市)が用いられた。それまでの東京の建物は、伊豆産の軟石が用いられていたが御影石である稲田石の発見と筑波鉄道の開通によって、明治中期以降は建造物にも使われるようになった。たとえば日本橋や迎賓館が挙げられる。
その稲田石の丁場を見るために笠間市稲田を訪れることになった。あわせて、笠間稲荷の門前町である笠間の町と稲田石丁場の門前町である稲田の町を歩いた。
笠間(茨城県笠間市)
笠間はずいぶん前に訪れたことがある。そのときはたいした町並みは残っていなかったという印象があり歩いておらず、日動美術館に行ったのみであった。しかし、今年出版された「日本の町並みV」に取り上げられていたので歩かないわけには行かない。
上野から特急列車に乗って約1時間で常磐線の友部駅に着く。常磐線との接続など全く考えていない水戸線で2駅目が笠間である。水戸線は単線ながら常磐線より古い鉄道。常磐線などにこっちから合わせてやるものかといったプライドがあるようだ。笠間の町は駅から遠い。たいした町並みではなかったが往復でタクシーを利用せざるを得なかった。
稲田(茨城県笠間市)
笠間から1駅西へ行くと稲田である。進行方向右手に山肌が崩された低い山脈が連なる。
駅は昔ながらの古い駅舎。駅前には建材として稲田石を見出した鍋島彦七郎の像がある。其の横に石造の建物が建っており、さすが石の町だという印象だ。電車を降りた子供づれの人について歩いていくと旅館らしき建物を見つけた。最盛期はさぞ賑わったのであろう。
稲田の町には石の建物はなかったが塀や門柱に稲田石を使った家が多く見られた。グルッと廻ってきて駅に戻ってくると駅前通に一際大きな敷地の洋館が建っている。石材業で財をなした中野組の事務所だ。
そこから初代鍋島商店の後を継いだ(株)タカタの丁場を見せてもらった。昔、仮面ライダーを見たことがあるか?。最後にライダーが戦うシーンで必ず悪者がやられて爆発したことを覚えているだろうか。あのシーンは稲田石の丁場で撮影されたものが多いという。今のようなCGによる合成が出来ない時代である。しょっちゅう発破で石を切り出していた丁場なら悪役が爆発しても環境に問題はない。