備前 伊部〜西大寺
 

 サンライズ瀬戸号・出雲号は東京を22:00に発ち、予定通り岡山に早朝6:27に到着した。岡山で瀬戸号と出雲号が切り離され、前の瀬戸号が瀬戸大橋を渡り四国の高松へ、後ろの出雲号が伯備線を北上し山陰の出雲市へと向った。寝台列車は十数回は乗っているが未だ熟睡できない。寝ぼけながら駅の階段を上り下りして赤穂線播州赤穂行きに乗り込む。列車は山陽本線上を大阪方面へ戻るが、東岡山駅を過ぎると一気に南へターンし赤穂線となる。辺りは見る見る明るくなっていく。
 今日は、午前中に3つの町を歩かなければならない。最も困ったヤツが長船町の福岡で、町が駅から1km以上離れている。この往復時間のために30分強は見ておかなければならない。なかなか計画に苦労した。関西を地元とする「いらかぐみ」のメンバーからの情報を得た結果、まず岡山から最も遠い伊部を30分で歩いてから長船福岡に1時間半、メインの西大寺に余裕を持たせる計画となった。
伊部(岡山県備前町)
 伊部の町は山陽新幹線が脇を通っている。ここに新幹線の駅でもあれば岡山にわざわざもどらなくて良いのだがしょうがない。駅を降りると高々とそびえた煉瓦煙突が上っていた。焼きものの町特有の光景。知多の常滑、佐賀の伊万里などでも経験している。備前焼は過去も現在も注目されている焼きもの。町は寂れることなく現役で繁栄しているとみえて古い建物は少ない。それでも、岡山らしいナマコ壁や本瓦葺き屋根、中には草葺の町家が見られた。どれも街道側にショーウインドゥをしつらえているのが面白い。
長船福岡(岡山県長船町)
 長船駅で下車したらラッキーなことに駅前にタクシーが待っていた。町の中心が駅から離れた町ではタクシー業が成り立っているという証で、今後こういった町を訪れる際の参考になる。初乗りで福岡に着きタクシー呼び出しの電話番号を聞いて降りる。福岡の町は田園の中に突然出現する町。中世に全盛期を迎えた都市なので現在は都市的な町並みは見られないが、その街区割りに由緒を感じる。
 帰りのタクシーを呼んだら行きと同じ運転手さんであった。結果的に一本早い赤穂線に乗ることができた。
西大寺河本町(岡山県岡山市)
 長船町のタクシーのおかげで西大寺にたっぷり時間をあてることができる。本日のメインディッシュである西大寺は町並みの範囲が広いのだ。
 駅前でタクシーに乗り、最も遠い旧河本町の端まで連れてってもらう。吉井川にかかる雄川橋の袂から西大寺観音院へ向って歩く。
 旧河本町は吉井川に沿った旧堤防上に形成された街道町。古い川の流れに従った土手のうねりによって町並みもうねる。やがて重厚な商家が軒を連ねる場所が見えてきた。帆船時代に栄えた町並みは鉄道によって廃れた。したがって帆船時代の商家が残っているのである。
西大寺門前町(岡山県岡山市)
 旧河本町を抜けると製紙工場があって町並みはいったん途切れる。やがて大きな旅館らしき建物が現れ小川を渡ると土手下の町並みが再開する。五福通りという観音院門前の商店街。年に一回の観音院裸祭りで半年分相当の売り上げをあげるというこの商店街は寂れることもなく手入れが行き届いている印象だ。江戸明治の旧河本町の町並みとは対照的に、近代洋風の商店が目立つ大正昭和の町並みが見られるのが面白い。
 西大寺は、観音院に向う他の街道にも町並みがあるが、やや古い町並み度は低い。