第3回 いらかぐみ みちのくオフ会 in 銀山温泉

 
 町並みWeb集団「いらかぐみ」結成から2年、第1回オフ会:山口県祝島、第2回オフ会:旧中山道奈良井宿、そして今年も第3回オフ会が5月21,22日に開催された。
 毎度、3月頃になるとオフ会を何処にしようか準備が始まる。祝島、奈良井と東へ進んできた流れで、目的地はあっさり東北地方「みちのく」に決定した。しかし、みちのくと言っても広い。町並み好きの面々からすれば南は会津から北は津軽まで、集合地の選択肢には事欠かない。そんな中で、ほぼ全員一致で選ばれたのは山形県尾花沢市の銀山温泉であった。木造3階建ての古い旅館が建ち並び温泉につかってゆっくりできるとなれば、「いらかぐみ」オフ会の地として申し分ない場所である。
 今回のオフ会は、「いらかぐみ」メンバー6名のうち孫右衛門、Kさん(+Fさん)、西山遊野、nomnomの4名+1名が参加した。Satopyと七ちょめは都合が折り合わず残念ながら不参加となった。

 集合地である銀山温泉はすぐに決まったものの、そこへ辿りつくルートは最後の最後まで決まらなかった。それもそのはずで、今回のみちのくは西日本に拠点を置くメンバーからすれば簡単には行く機会が持てない地方だ。それぞれが何処を訪れるかじっくり思案していたのであった。それでもゴールデンウィークを過ぎた頃には各人がオリジナルの行程を組み上げた。そして、各々の行程を尊重しながらオフ会としてメンバーが同行する範囲が決定された。
 その結果、銀山温泉を核にして各メンバーが訪れた町並みや集落は実に37箇所にも及んだ。しかも、ある者が昨日訪れた町を翌日別の者が訪れるというクロスオーバー状態。第三者からみれば、「せっかくオフ会で集まるのになぜ一緒に歩かないの?」と思われるかもしれない。しかしそこが「いらかぐみ」ならではで、無理して同行しようとはしない。町並み好きとはいってもそれぞれの思いや探訪方法は微妙に異なっている。各々がみちのくの町並みを歩いてどんな印象を受けたか、その印象を披露しあって互いの違いや共通点を楽しむのが「いらかぐみ」オフ会なのである。
 
5人が歩いた町並みの総数はなんと6県37箇所
 
 平成17年5月19日朝、最初に出発したのはKさん。連れのFさんと一緒に福井県敦賀港から現代版北前船(新日本海フェリー)で一昼夜かけて秋田港に上陸した。秋田県内の角館、横手、増田、泥湯温泉、山形県の上五十沢を描いて銀山温泉に21日午後到着。木造3階建ての旅館建築が建ち並ぶ町並みという大物に半日かけて挑戦しながら他のメンバーの到着を待つ。

 孫右衛門は、5月19日夜広島から新幹線で大阪に出て寝台急行きたぐに号に乗り換えた。京都からは西山遊野が同列車に乗り込み、翌朝二人は新潟から入った。孫右衛門は常磐西線に乗って会津からスタートし、福島県の大内宿、塔寺、喜多方、杉山・三津谷、宮城県の丸森、角田、岩沼を歩いて第一次集合地白石へ。西山遊野は、新潟県村上、山形県酒田、秋田県角館、岩手県盛岡、水沢、江刺、金ヶ崎と大きく周って白石へ向った。一方、nomnomは5月21日の夜中に東京を出発し、宮城県大滝宿、山形県大沢宿、米沢、白布、川西、長井と農村集落を中心に歩いて白石へ向った。
 こうして第一集合地である白石に集まった孫右衛門、西山遊野、nomnomの3人は、白石、村田と歩いてから夕刻銀山温泉に到着した。6時を過ぎ日が落ちた山間のいで湯は外灯や旅館の部屋に明かりを灯し、なんともいえない柔らかな雰囲気で3人を出迎えてくれた。その頃、3人の到着を持ちわびていたKさんとFさんは、旅館のバルコニーに座り込んで宿「永澤平八」の看板をスケッチしていた。
孫右衛門、西山遊野、nomnomの3人は白石で集合
蔵造りの町並み村田を歩く
出迎えてくれた銀山温泉の夕景
右手の旅館のバルコニーでKさんが到着を待っていた
 

花笠音頭の実演で賑わう夜の温泉街
 宿泊した旅館の名前は「永澤平八」。珍しい名前だが銀山温泉の老舗旅館にはかならず創業者の名前がついている。宿の風呂はもちろん温泉で半露天の専用風呂が大変よろし!。風呂を上って部屋に戻ると料理が盛られたお膳が並べられていた。
 料理つまんで酒を飲みながら旅前半の話題で盛り上がる。その時、なにやら外でにぎやかな音がする。外では花笠音頭の実演が催されていた。木造3階建てに挟まれた通りや橋の上に大勢の人が集まり、旅館のバルコニーからも人が覗き込んでいる。その空間はまるで野外劇場のようだ。

早朝の銀山温泉

大正ロマンを感じさせてくれる旅館建築の装飾
 食事と花笠音頭の後は、Kさんが持参してきた焼酎を飲みながら町並み談義に花が咲く。しかし、みんな精力的に歩いたり描いたりした今日一日、もっと話がしたいが眠さに勝てず11時に消灯となった。

 みちのくの夜明けは早い。まだ銀山温泉を歩いていない前夜入りした3人は5時半に起床、早朝の町を歩く。西山遊野は前日Kさんが描いたアングルと同じ場所に座り込んで早朝スケッチを開始する。
 銀山温泉は銀山の門前に発見された温泉街。やがて銀山は衰退するものの温泉街は湯治場として栄えた。現在みられる町並みは、大正期から昭和初期にかけて造られたもので、大正2年の洪水の後にモダンな建築に建て替わったものである。町並みの規模は小さいが濃度は高く、木造3階建て4階建ての旅館が並び向かい合って建っている。特徴はそれら建物の装飾で、バルコニー、破風、洋風の玄関、戸袋の鏝絵などが目を引く。

 いらかぐみの面々は、すっかり銀山温泉の濃度の高い町並みに魅了された。朝風呂につかり朝食を食べた後、5人は早々と次の目的地に向った。
 KさんFさんは、後半は昨日3人が歩いた村田を描いた後、磐梯吾妻スカイラインを経て喜多方へ下り、丸1日喜多方や北部の杉山・三津谷集落を描く。
 孫右衛門、西山遊野、nomnomの3人は、前日Kさんが描いた上五十沢の茅葺集落を訪れた。そして、大石田駅で3人は解散し、またそれぞれの旅に戻った。孫右衛門は山形駅でレンタカーを借り河北町谷地、上山温泉、楢下の町並みを歩いた。西山遊野は大石田の蔵造の町並みを歩いた後、山形市内の近代建築を描いた。nomnomは逆にさらに北上し、金山、秋田県院内、湯沢の町並みを歩いてから帰路についた。


片側が切妻、片側が寄棟の上五十沢の茅葺集落
 第3回 みちのくオフ会 in 銀山温泉 は、無事終了した。今回はそれぞれが縦横無尽にみちのくを歩き回り、大変内容の充実したものになったと思う。そして、旅のすべてにわたって展開する「残雪の山々」「眩しいほど輝く新緑」「田植えのなされた水田」の風景。この時期のみちのくの町並みの背景は、紅葉の時期に勝るとも劣らない最高のものであった。
nomnom 記