鷲見 余呉型民家が並んでいた丹生谷の廃村集落跡

滋賀県
余呉町
鷲見

高時川沿いに荒れるままの村道を進むと山間に坪庭のように開けた場所がある。そこが鷲見集落跡である。




集落の中を流れている鷲見川。この川沿いに、余呉型民家が妻面を並べていた。

かつての鷲見集落。映画「八つ墓村」(渥美清主演、野村芳太郎監督)の32人殺しのシーンのロケ地になった場所。(写真は「日本の集落第2巻」より)


集落の西側にお寺の境内跡のような場所あった。


集落の東側手前にあった神社跡。石垣と階段が残っていた。

神社境内から撮ったと思われるかつての写真。
(写真は「日本の集落第2巻」より)
この集落が残っていたら板取以上かもしれない。間違いなく重伝建であろう。
余呉町は、滋賀県北部の農林業の山村である。
国道356号線は木之本から栃ノ木峠を越えて越前国の板取、今庄へ抜ける北国街道である。その東側に高時川に沿う村道中河内木之本線は、栃ノ木峠までの脇街道であった。

この脇街道が通る丹生谷には余呉型と呼ばれている民家の分布域である。
余呉型民家は一般的に妻入りで、屋根は茅葺の入母屋、間取りは手前に土間、その奥に「ニュウジ」と呼ばれる土間、さらに奥にネマ、ザシキという配置である。ニュウジは、土間の上にムシロなどを敷き囲炉裏を囲む部屋であったという。

国道356号線から東へ折れ、村道を走ると菅並という余呉型民家が妻面を同一方向に向けた集落がある。さらに進むと、道は細くなり高時川沿いの林道のようになってくる。ここから先はダム計画のため一般車通行止めとなる。その先に廃村となった鷲見、針川、半明などの集落がある。

2000/8/1、丹生谷を訪れたが村道は南側北側どちらからも通行止めとなっており車が入れない。しょうがないので南側の道路脇に車を止めて、歩きで鷲見集落を目指した。道路は荒れ放題であるが、高時川の清流とくねる谷の風景は美しい。

やがて谷が開けた場所が見えてきた。余呉型民家が小川沿いに並ぶ鷲見集落を期待し、山間の坪庭のような場所に辿りついた。しかし、そこにはイメージしていた風景は無く、家屋がすべて取り壊されたあっけらかんとした「集落跡」だけが残っていた。

鷲見川に点々とかかる木橋や川辺りの石垣、お寺の境内と思われる高台、地図に神社マークのあった場所には石垣と階段が残っていた。そして何本も立っている電柱が、かつてそこに人の暮らしがあったことを示していた。
ダムの湖底に沈むため離村した鷲見集落。この奥の針川、半明も同様の光景であろう。昔の写真からはなんとも美しい集落景観があったことがわかるが、下手に保存運動でも起きるとまずいので家屋を壊してしまったのだろうか。もう見られないのが残念でならない。

交通

国道365号線より村道285号線に入る






参考資料 リンク


参考文献
『日本の集落 第2巻』 高須賀晋・畑亮夫 建築資料研究社