筒石 日本海に臨む岸壁下の木造3階建て漁村集落

新潟県
糸魚川市
(旧能生町)
筒石





交通

JR北陸本線筒石駅下車徒歩





筒石




2005.08.15
新潟県の直江津から西の日本海沿岸は山が海に迫った厳しい地形で、海岸線に沿った僅かな平地にへばり付くような漁村集落が形成されている。その典型が筒石である。
車が通れない細い街路の両側に一寸の余地も惜しむがごとく住居がびっしり建ち並ぶ。入り口は全て街路側で背後は海か山だ。現在は一本のバイパスが山側に、もう一本は国道8号線で海側に通っていて、そちら側に駐車場が纏めて設けられている。住居は平入の3階建が多いのが特徴で、いかに求められる居住スペースに対して敷地が狭いかが分かる。街路に面する玄関の脇には水栓と流しがあり街路側から使うようになっている。街路が公共空間でありながら各戸の前庭空間になっている。
かつての港は川が海に注ぐ処にあったと思われるが、現在は浜辺を埋め立て防波堤をめぐらして造られている。港の周りには古い共同の舟屋が並んでいる。一方、舟屋の原形が見られるのが集落の東端の海岸で、防波堤もない浜辺に一軒一軒舟屋が並んでいる。日本海沿岸は、東北地方から山陰地方にかけて浜辺に舟屋が並ぶのが共通した集落景観だったが、現在では少なくなっている。筒石は集落と舟屋の両方において、典型的な日本海沿岸の集落景観が残っている貴重な場所であるといえよう。
山側の道路(駐車場)から階段から町に下りる。冬の風雪に備えた板壁の間の路地抜けてセンターの街路に出る。(上)

集落を貫くセンターの街路。微妙な曲りは地形に従って形成された証。一寸の余地も惜しむがごとく住居が並ぶ。(下)

町並みは平入の木造3階建が多い。求められる居住スペースに対していかに敷地が狭いかがわかる。

現在のJR北陸本線筒石駅は町からずっと山の中に入った場所にある。だが、かつては集落のすぐ山側を通っていた。その頃はこの辺りが駅前だったのであろう、集落と川の交差するあたりに商店が集まっている。

集落の間を割って流れる川。(左上、左)
各戸の入口の脇には水栓と流しが街路に向って付いており、街路側から使うようになっている。つまり街路が公共空間でありながら前庭空間でもあるということ。このような形態は福井県日向でも見たことがある。日向では各戸のトイレが街路に面して並んでいた。
集落の東端付近では住居は山側の一列だけ。殆どが木造3階建てである。
集落を外れた東側は海岸に舟屋が並ぶ。防波堤もない外海に直接面して並んでいる風景は今では珍しい。
大型の舟屋が並ぶ筒石港。舟屋は共同の建物になっていて1スパンごとに船が収納されるようになっている。舟屋の中は道具でいっぱいだ。
共同舟屋の後ろ側。スパンごとに入り口があって、その脇に「○○丸」と船の名前が記されている。天窓が付いていて明かりが差し込むようになっている。屋根は瓦葺、棟の上にウミネコが並んで停まっていた。
参考資料 リンク
糸魚川市


参考文献
『日本の町並みV 関東・甲信越・東北・北海道』 西村幸夫監修 平凡社