長崎戸町 造船所と旧花街の姑楼が建ち並ぶ町並み

長崎県
長崎市
戸町





交通

JR長崎駅よりバス利用





長崎戸町





2005.06.17
長崎は鎖国中の江戸時代にも開いていた港。異国情緒漂う港町として有名な観光都市であるが、同時に造船の町でもある。長崎の南山手あたりから対岸の稲佐山方向を眺めると三菱重工の造船所ででっかい船が造られているのが見られる。しかし、造船所は三菱重工だけではない。細長い長崎港に面する入り江には中小の造船所がたくさんあるのだ。戸町は長崎市街から南に下り、現在築造中の港の東西を結ぶ大きな吊橋まで行く途中にある町である。
長崎という町は、よくもこんな険しい海岸地形の場所に都市を創ったものだと驚かされるほどの急坂の多い町だが、外町もその典型で、入り江に造船工場と町、背後の山に住宅が駆け上がっている。入り江の海岸線にはクレーンを上げた年季の入った造船所の施設が並んでおり、その中に木造3階建ての建物も見られる。これは工場町に形成された「旧戸町鶴海遊郭」の跡である。明治20年に開かれ、昭和初期には16件の貸し座敷があった。「全国遊郭案内」には、「長崎駅で下車し乗合自動車又は市電で大波止まで行き、大波止からランチ(小舟)で渡る方が面白い」と紹介されている。現在残っている姑楼は数軒で、もちろん営業はしておらず単なる住宅となっている。戸町は、造船業で栄えた産業町長崎ならではの趣を感じることができる町だ。
入り江の対岸から旧戸町鶴海遊郭を眺める。木造3階建ての建物が建ち並んでいるところが見えるであろう。
戸町の入り江の周りにはクレーンを上げた中小の造船所が張り付いている。
入り江の北側は岬状になっていてグルッと道が巻いている。現在、長崎から外町に向ってバスに乗るとトンネルをくぐって町に入るが、かつてはトンネルは無くこの道で長崎へ通じていた。
木造3階建てが並ぶ旧戸町鶴海遊郭の町並み。手前側はディスカウントショップの駐車場になっていた。以前は造船所だったのだろうか。
もっとも遊郭時代の面影を残す建物。
通りに面して木造2階、あるいは3階の切妻平入の建物が並び、背後は中庭を取り囲んだ造り。

レトロ感抜群の「九一調髪館」。1階壁面が僅かに凹曲面になっているのが洒落ている。
旧遊郭の崎で道が折れてアイストップとなっている「渡辺造船」。造船所というと鉄のイメージが強いが、洋風下見板貼りの建物がなんともレトロ。
戸町の町は入り江の奥深く続いている。
背後は長崎らしく住宅が山に駆け上がって行く。
旧遊郭から対岸を見たら立派な和風住宅があった。行って見ると年季の入った造船所「井筒造船」。山手の洋館群や中島川の石橋群が長崎の有名な風景だが、こういう造船所も忘れてならない長崎の重要な景観要素ではないだろうか。
参考資料 リンク
長崎市

参考文献
『赤線跡を歩く2』 木村聡 自由国民社