平沢 近世から漆器製造で栄えた中山道の街道町

長野県
楢川村
平沢



交通

JR中央線
平沢駅下車



国道19号線




平沢




2004.05.30
国道19号線は平沢の町を迂回して町より高い位置を走っている。バイパス沿いには木曾漆器を売る観光バス相手の駐車場付きの店が並んでいる。ここから見下ろす平沢の町は、谷を埋め尽くすように赤茶色の屋根がびっしりで観光バスが立ち寄るのは無理そうである。その規模は大きく、なるほど楢川村の中心市街だと感じる。
街中に入っていくと、旧中山道に沿って漆器を売る店が建ち並んでいる。九州の有田と同様に買い付けに来る商人を相手にした店構えが連続する。街道は蛇行しており、平沢の中心部は町家が街道に平行に建てられておらず、雁行して建っている。雁行することによって生まれた側壁には店の看板が、三角の空き地は駐車スペースとなっている。しかし、バイパスから見下ろしたような町の厚みが感じられない。それは一軒一軒の敷地の奥行きが深く、奥に漆器製造の作業場があるからである。作業は蔵造りでちりや温度変化を嫌う漆器つくりに適していたからのようだ。
平沢は宿場町ではないが、近世以来漆器を製造販売する問屋町として、休日よりも平日に活気が感じられる町並みである。
中心部の町並み
雁行することによって発生する側壁にはしっかり店名が表示されている(京側)。江戸側からは看板は目立たない。また、そこに生まれた三角地は駐車スペースに使用されている。雁行する町並みで全国共通した現象である。

みすず漆器店
平沢でも比較的大きな店構えの建物。1階小庇の付け根の装飾や2重の屋根の表現など、軒のデザインに力が入っている。
平沢には、木曾中山道で共通して見られる出桁造りの町家は少ない。立ちが高い昭和期の町家が多いため、ここも火災があったのであろうか。
画像は漆器問屋の中田漆器本店。
栄えた町に必ず見られるお屋敷。軒を連ねる町並みの中で、前庭をもって角に洋館を目立つようにつけている場合が多い。
この住宅で面白いのが、黒漆喰の座敷蔵と白の洋館の組み合わせであることと、和館に洋館が付いているのではなく洋館に和館が付いていること。
平沢では土蔵の中で漆器造りが行われているというが、そのためなのか、あるいは大火後の建築だからなのか。
参考資料 リンク
楢川村

参考文献
『民家巡礼 西日本編』 溝口歌子・小林昌人 相模書房