観音林 明治末から開発された大阪財界人の別荘地

兵庫県
神戸市
東灘区
住吉山手
1,2,3,4,5




交通
阪急御影駅下車徒歩






観音林





2007.02.28
兵庫県南東部にある六甲山は標高931m、東西50数キロの山脈である。その南麓の傾斜地は、東洋のマンチェスターと呼ばれた大阪に対する健康地として、大阪財界人の別荘地が開発された。その走りが明治末期から開かれた観音林地区(現在の神戸市東灘区住吉山手・御影)で、神戸にもっとも近いエリアである。その後、昭和初期にかけて東の芦屋、西宮、宝塚へと発展していった。
六甲山は全山が花崗岩で出来ていているため、これら別荘地の造成には御影石が使われた。御影石は御影で採れる花崗岩のことであるが、その後花崗岩の総称として呼ばれるほどポピュラーな石材となる。阪急御影駅で降り、北東の方向へ歩いていくと大きな御影石を惜し気もなく使った石垣や塀の町が現れる。そこが阪神間の高級住宅地の走りである観音林地区である。石垣は平均して人の背丈ほどまで積み上げられ、その上が生垣になっていて綺麗に刈り込まれる。大きな屋敷では母屋を通りから容易に見ることが出来ないが、洋風の住宅が建っている。東京の山手ではマンションへの建て替えがかなり進んでいる地域が多いが、阪神間ではまだまだかつてのお屋敷町が残っているものだと感じる。
斜面住宅地の最下部。綺麗に刈り込まれた池が生垣。
大きなお屋敷の脇を山に向かって歩いていく。
やがてお屋敷の中の母屋が見えてくる。ハーフティンバーの切妻の洋風住宅である。幾棟もある大きな建物だった。
上の写真のさらに山側のお屋敷。3階建ての洋風住宅が建っていて、北側に玄関を配置した左右対称形だった。
財閥企業の創始者の家のような、まさにドラマ「華麗なる一族」の万俵家である。

住宅地からは阪神工業地帯の工場群を見下ろす。六甲山の川は氾濫を繰り返したのでしっかりした護岸が整備されている。(上)

生垣も刈り込まれないとこうなってしまう。(左)
六甲山麓には江戸時代から多くの水車があった。水車を利用して菜種油や酒が作られ。近代になって開発された住宅地に清らかな水路が通っているのは。もともと水車のために作られたものである。
有馬道は石材の積み出しや水車へ往復する牛車が通った道。(左)

御影石で積み上げられた門塀。塀と小屋が一体化している。(下)
参考資料 リンク
神戸市

参考文献
『石の街並みと地域デザイン』 三宅正弘 学芸出版社